取引先が反社会的勢力と取引していた場合の対処法と予防策

■はじめに:取引先の反社取引が発覚したら

企業のコンプライアンス担当者や経営者にとって取引先が反社会的勢力と関係を持っていることが判明した場合、どのように対応すべきかは極めて重要な問題です。自社が直接反社会的勢力と取引していなくても取引先を通じた間接的な関係によって企業の社会的信用が大きく損なわれるリスクがあります。
近年、金融機関や上場企業だけでなくあらゆる規模の企業に対して反社会的勢力排除の取り組みが求められるようになっています。2011年には全国の暴力団排除条例が施行され企業には反社会的勢力との関係遮断が法的にも強く求められる状況となりました。このような環境下で取引先が反社会的勢力と取引していることが発覚した場合、自社はどのような影響を受けどう対応すべきなのでしょうか。
本コラムでは、取引先の反社取引が発覚した際の法的リスク・具体的な対応手順・そして今後同様の事態を防ぐための予防策について実務的な観点から詳しく解説していきます。

■取引先の反社取引によって生じる企業リスク

取引先が反社会的勢力と取引している事実が判明した場合、自社には直接的な法的責任はないもののさまざまなリスクが発生します。まず最も深刻なのはレピュテーションリスク、つまり企業の評判や信用に対するダメージです。メディアやSNSで「反社会的勢力と関係のある企業と取引している」という情報が拡散されれば自社のブランドイメージは大きく傷つきます。
金融機関との取引においても影響が出る可能性があります。銀行は融資先企業の反社チェックを厳格に行っており取引先を通じた間接的な関係であっても新規融資の審査に悪影響を及ぼしたり既存の融資条件の見直しを求められたりする場合があります。特に上場企業や上場を目指す企業にとっては証券取引所の審査基準にも関わる重大な問題となります。
さらに、自社の他の取引先からも懸念の声が上がる可能性があります。大企業の多くは取引先に対して反社会的勢力との関係遮断を求めており間接的な関係であっても取引停止や取引条件の見直しを要求されるケースがあります。結果として自社のサプライチェーン全体に影響が波及し事業継続に支障をきたす恐れもあるのです。
また、暴力団排除条例では反社会的勢力に利益を供与する行為が禁止されています。取引先を通じて間接的に反社会的勢力に利益が流れている構造が認められれば条例違反と判断される可能性もゼロではありません。行政指導や勧告の対象となれば企業名が公表され社会的信用は決定的に失墜します。

■取引先の反社取引に関する法的な位置づけ

法律的な観点から見ると取引先が反社会的勢力と取引していること自体について自社に直ちに法的責任が生じるわけではありません。契約の自由という原則があり取引先が誰とビジネスを行うかは原則として取引先の判断に委ねられています。
しかし、状況によっては法的責任が問われる可能性もあります。例えば自社が取引先の反社取引を知りながら黙認し継続的に取引を続けた場合です。特に自社から取引先に支払った代金が反社会的勢力に流れることを認識しながら取引を継続すれば暴力団排除条例における「利益供与」に該当すると判断される余地があります。
民事的には自社と取引先の間で締結している契約書に「反社会的勢力排除条項(反社条項)」が含まれているかどうかが重要になります。多くの企業では契約書に「契約当事者が自ら反社会的勢力でないことまた反社会的勢力と関係を持たないこと」を表明保証させる条項を設けています。この条項には取引先自身が反社会的勢力でない場合でも反社会的勢力と密接な関係を持つことが禁止事項として含まれることがあります。
反社条項の文言によっては、「取引先が反社会的勢力と取引している」という状況も契約違反とみなされ自社は催告なしに契約を解除できる場合があります。ただし契約書の文言次第では取引先自身が反社会的勢力である場合のみを対象としており取引先の取引先までは対象としていないケースもあります。したがって実際の対応を検討する前にまず契約書の反社条項の内容を詳細に確認する必要があります。

■発覚時の初動対応:事実確認と社内体制の整備

取引先が反社会的勢力と取引しているという情報を得た場合、まず行うべきは事実関係の慎重な確認です。風評や不確実な情報に基づいて性急に行動すると逆に自社が名誉毀損などの法的リスクを負う可能性があります。
情報源の信頼性を検証し可能な範囲で客観的な証拠を収集します。ただし、自社で独自に調査を行うことには限界がありかえって相手方を刺激するリスクもあります。そのため警察や暴力追放運動推進センター(暴追センター)・弁護士などの専門家に相談しながら慎重に情報収集を進めることが賢明です。
同時に、社内での情報共有と対応体制を整えます。コンプライアンス部門・法務部門・経営層を含めた対策チームを編成し情報の取り扱いには細心の注意を払います。この種の情報は機密性が高く不用意な漏洩が企業活動に重大な影響を及ぼす可能性があるためです。
事実確認の過程では取引先に直接確認するかどうかも判断が必要です。確認することで相手方が事態の隠蔽を図ったり証拠を隠滅したりする可能性がある一方で誤解や風評であれば取引先との信頼関係を不必要に損なうことになります。多くの場合まずは外部の専門機関による調査を優先しある程度確実な情報が得られた段階で取引先に事実確認を行うアプローチが採られます。

■取引先への対応方針:関係の見直しと契約解除

事実関係の確認ができた段階で取引先への対応方針を決定します。基本的な方針としては取引先に対して反社会的勢力との関係遮断を求め改善されない場合は取引を停止または解除するという流れになります。
まず、取引先に対して書面で事実確認を行い反社会的勢力との取引関係について説明を求めます。この際、単に事実を確認するだけでなく自社として反社会的勢力排除の方針を改めて伝え取引先に対して関係遮断を要請することが重要です。取引先がその要請に応じ実際に反社会的勢力との関係を遮断する具体的な措置を講じるのであれば取引継続の余地も検討できます。
しかし、取引先が関係遮断に応じない場合や形式的な対応に終始して実質的な改善が見られない場合は契約解除を検討せざるを得ません。契約書に明確な反社条項がありその条項が取引先の反社取引をカバーしている場合は比較的スムーズに契約解除が可能です。条項に基づいて催告なしまたは短期間の催告で契約を解除できる場合もあります。

一方、契約書の反社条項が取引先の取引先までカバーしていない場合やそもそも反社条項が設けられていない場合は解除の法的根拠を慎重に検討する必要があります。民法上の債務不履行や信頼関係の破壊を理由とする解除も可能性としてはありますが解除の有効性を巡って紛争となるリスクがあります。このような場合は弁護士に相談しながら法的に適切な解除手続きを進めることが不可欠です。

取引解除に際しては自社の経済的損失も考慮に入れる必要があります。代替の取引先を確保できるか事業継続に支障が出ないかといった実務的な観点も重要です。しかし長期的に見れば反社会的勢力と関係のある企業との取引を続けることによる信用リスクの方がはるかに大きいため短期的な損失を覚悟してでも関係を遮断する決断が求められます。

■契約書における反社条項の整備

今回のような事態を今後防ぐためまた発生した場合に迅速に対応できるようにするため契約書における反社条項の整備が極めて重要です。現在使用している契約書に反社条項がない場合は早急に導入すべきです。
効果的な反社条項にはいくつかの要素を盛り込むことが推奨されます。まず契約当事者が自ら反社会的勢力でないことの表明保証です。これは基本的な条項ですがさらに一歩進んで「反社会的勢力と密接な関係を有していないこと」「反社会的勢力を利用していないこと」なども表明保証させることが望ましいでしょう。
加えて将来にわたる確約も重要です。契約締結時点だけでなく契約期間中も継続して反社会的勢力との関係を持たないことを確約させます。万が一契約期間中に反社会的勢力との関係が生じた場合は直ちに相手方に通知する義務も定めておくと早期発見につながります。
そして最も重要なのが違反時の措置です。表明保証に違反した場合や確約に反した場合は催告なしに直ちに契約を解除できることを明記します。また契約解除によって生じた損害について違反した側が賠償責任を負うことも定めておくべきです。これにより取引先に対して反社会的勢力との関係遮断を強く動機づけることができます。
反社会的勢力の定義についても可能な限り明確に規定することが望ましいです。暴力団・暴力団員・暴力団準構成員・暴力団関係企業・総会屋・社会運動等標ぼうゴロ・特殊知能暴力集団など具体的に列挙することで後の解釈を巡る紛争を防ぐことができます。

■デューデリジェンスと継続的モニタリングの実施

契約締結前のデューデリジェンス(事前調査)も反社リスクを未然に防ぐ重要な手段です。新規に取引を開始する際には相手企業の反社チェックを必ず実施すべきです。特に一定規模以上の取引や継続的な取引関係となる場合はより慎重な調査が求められます。
反社チェックの方法としてはまず相手企業の基本情報を収集します。商業登記簿謄本で会社の正式名称・本店所在地・役員構成などを確認しインターネット検索で評判や報道歴を調べます。また専門の調査機関や信用調査会社のデータベースを利用することも有効です。これらの機関は反社会的勢力に関する豊富な情報を蓄積しており効率的なチェックが可能になります。
さらに暴力追放運動推進センターや警察に照会を行うことも検討すべきです。特に大型案件や重要な取引先については警察への照会が推奨されます。ただし警察への照会には一定の手続きが必要であり、また回答に時間がかかる場合もあるため余裕を持ったスケジュールで進める必要があります。
契約締結後も継続的なモニタリングが重要です。取引先の状況は時間とともに変化する可能性があり契約時には問題がなくても後に反社会的勢力との関係が生じる場合もあります。定期的に取引先の状況を確認し報道や風評に注意を払い異変の兆候があれば速やかに調査を行う体制を整えておくべきです。
特に注意すべきサインとしては取引先の経営陣や株主構成の突然の変更、不自然な取引条件の要求、暴力的な言動や威圧的な態度の表出などが挙げられます。こうした兆候を見逃さないよう営業担当者や現場の従業員に対する教育も欠かせません。

■社内体制の構築とコンプライアンス文化の醸成

反社会的勢力排除を実効性あるものとするには社内体制の整備とコンプライアンス意識の浸透が不可欠です。まず、社内規程として「反社会的勢力対応規程」を策定し会社としての基本方針、対応体制、具体的な手順を明文化します。

対応部署を明確に定め責任者を配置することも重要です。多くの企業ではコンプライアンス部門や法務部門が中心となり総務部門、営業部門などと連携して対応する体制を構築しています。また外部の専門家との連携体制も整えておき弁護士、警察、暴追センターなどとの相談ルートを確保しておくべきです。
従業員教育も継続的に実施する必要があります。反社会的勢力の手口は巧妙化しており一見すると普通の企業を装って接近してくる場合もあります。従業員が反社会的勢力の特徴や典型的な接触パターンを理解し異変に気づいた際には速やかに報告できるよう定期的な研修や啓発活動を行うことが求められます。
特に営業部門や購買部門など外部と接触する機会の多い部署には重点的な教育が必要です。また、新規取引の際のチェック手順を標準化し反社チェックを必須プロセスとして組み込むことで組織的な対応を可能にします。

■まとめ:予防と迅速な対応が企業を守る

取引先が反社会的勢力と取引していることが判明した場合、自社には直接的な法的責任はなくても放置すれば重大なレピュテーションリスクや取引機会の喪失につながります。そのため事実確認を慎重に行い取引先に対して関係遮断を要請し改善が見られない場合は契約解除も辞さない姿勢で臨むことが必要です。
何より重要なのはこのような事態を未然に防ぐための予防策です。契約書に実効性のある反社条項を整備し新規取引時には必ず反社チェックを実施し既存の取引先についても定期的なモニタリングを行う体制を構築することでリスクを大幅に低減できます。
また、社内のコンプライアンス意識を高め従業員一人ひとりが反社会的勢力排除の重要性を理解し異変に気づいた際には速やかに報告できる文化を醸成することも欠かせません。経営層が率先して反社会的勢力との関係遮断に取り組む姿勢を示し全社的な取り組みとして推進していくことが企業の信頼性を守り持続的な成長を実現する基盤となるのです。
反社会的勢力との関係遮断は一時的なコストや労力を要する場合もありますが長期的には企業価値の向上につながる重要な投資です。予防と迅速な対応の両面から実効性のある反社会的勢力排除体制を構築していきましょう。

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