半グレ勢力図 ~新たな暴力集団の実態と現在~

半グレ勢力図 ~新たな暴力集団の実態と現在~

「半グレ」、この言葉が世間に広く知られるようになったのは2010年代に入ってからのことであり、特殊詐欺や六本木クラブ事件などの報道を通じて耳にするようになったこの用語は今や日本の治安を脅かす新たな勢力として注目されている。
2020年11月時点での半グレの人数とグループ数は警察が把握しただけで約4,000人(約60グループ)程度と推定されており、2019年末時点の六代目山口組構成員数に匹敵する巨大勢力へと成長している。
「半グレ」という呼称は暴力団に詳しいジャーナリストが命名したとされるがその実態は決して「半分」程度の問題ではない。むしろ、暴力団対策法の規制を受けない立場を巧妙に利用したより厄介な存在と言えるだろう。
半グレが社会問題として浮上した背景には日本の暴力団対策の成功がある。1991年の暴力団員による不当行為防止等に関する法律の施行(暴力団対策法)、ならびにその後の暴力団排除条例施行が"半グレ集団"勃興の誘因であったと専門家は分析する。
暴力団への規制が強化される一方で従来のように成人後に暴力団へ加入するという流れから外れた若者たちが独自の集団を形成し、彼らは暴力団対策法の適用外という「抜け穴」を利用して組織的な犯罪活動を展開するようになった。

関東連合 ~崩壊から変質へ~

半グレの代名詞ともいえる「関東連合」は、東京都の世田谷区烏山地域や杉並区の暴走族の連合体として1973年に結成され、2003年に解散している。しかし、その後もOB同士の結束は強く、2000年代から2010年代にかけて、東京・六本木周辺などで発生した各種事件の関係者としてたびたびその名が登場してきた。
2012年の六本木クラブ事件(フラワー事件)を境に関東連合は大きく変質した。フラワー事件で首謀者が海外逃亡してからは集団の求心力が失われ、いまはほとんどのメンバーが住吉会系の暴力団に一本化された状態となっている。
かつてのような独立性は失われむしろ暴力団の下部組織として機能するケースが増えており、いまも街で「関東連合」を名乗る不良はいますが正式には属していなかった後輩たちだったりと、ほとんど関係ない周辺者となっている状況だ。

怒羅権(ドラゴン) ~分裂と残存勢力~

中国残留孤児の2世ならびに3世を中核構成員とする怒羅権は、関東連合と並ぶ半グレの双璧として知られている。関東連合と並んで暴力団対策法の適用外にあたる不良集団で、いわゆる"半グレ"の顕著な例と言われる。
怒羅権の特徴はその国際的なネットワークにある。構成員らは蛇頭や東北系チャイニーズマフィア(東北幇)などと連携し国際犯罪にも関係している点で他の半グレ集団とは一線を画している。
しかし近年、関東連合に並ぶ最大の準暴力団「怒羅権」が分裂騒動の渦中にあると報じられており組織としての結束力に陰りが見え始めている。

関西勢力 ~アビスグループの解散~

関西地区では、大阪を拠点とした「アビスグループ」が最大の半グレ集団として知られていた。2017年から2018年にかけて大阪府警は半グレ集団アビスが経営していたガールズバーの経営者ら55人を傷害や恐喝未遂などの疑いで逮捕・送検、もしくは書類送検・家裁送致とし組織を解散に追い込んだと言われている。
この摘発により関西最大の半グレ組織は事実上壊滅したとされいているが、残党による特殊詐欺や薬物売買などの犯罪活動は未だ続いており、地下に潜ったことで実態がさらに見えにくい状況となっている。

準暴力団認定グループ

2013年には「関東連合」や「怒羅権」などの"半グレ集団"が警察庁によって新たに"準暴力団"と規定された。現在、東京の8団体と2017年に大阪府警が指定した2団体の計10団体が準暴力団と見なされている。

新興グループの台頭

従来の大型組織が警察の摘発や内部分裂で弱体化する一方、小規模で流動的なグループが各地で新たに形成されている。これらの新興グループは、「看板」を持たない彼らは規制強化により地下に潜るヤクザにいずれ取り込まれていく傾向にある。

特殊詐欺への特化

現在の半グレの主要な資金源は特殊詐欺となっている。コロナ禍では助成金詐欺など、社会情勢に応じた新しい手口も開発されている。

闇バイトとの連携

半グレ集団は、SNSを通じて一般の若者を「闇バイト」の実行役として犯罪に加担させる手法を確立しており、青少年を犯罪に巻き込む闇バイトも半グレが主犯のケースが多いと言われている。これにより組織の末端を常に補充し続ける事となる。

暴力団との関係性

興味深いことに地域によって暴力団との関係性が大きく異なっている。関東や関西の半グレは暴力団と手を組まずに活動することが多く対立も見られるのに対し、福岡では暴力団の力が相対的に強いため違法薬物の密売や特殊詐欺などで半グレを配下に従えている。

専門部署の設置

半グレ対策の困難さを受けて各地で専門部署が設置されている。警視庁が準暴力団(半グレ)対策の特命班を、福岡県警が「準暴力団等集中取締本部」を新設している。

実態把握の困難さ

しかし、半グレ対策には大きな困難が伴っている。暴力団がピラミッド型の統制のとれた組織であるのに対し半グレは内輪の仲間意識での繋がりであり、指揮命令系統が不明確でメンバー同士のつながりも流動的、離合集散を繰り返すなどその実態の把握は容易ではない。

数の脅威

約80以上のグループが存在するとされ、メンバーの総数は約4000名という(数の上では)六代目山口組構成員数に比肩しうる巨大勢力として半グレは確実に社会の脅威となっている。

今後の展望

半グレ問題は従来の暴力団対策では対応できない新しい形の組織犯罪として位置づけられている。暴力団同様に半グレの跋扈をこれ以上許してはならないという警察の姿勢は明確だがその対策には官民の連携が不可欠となっている。
半グレという存在は日本の治安対策における新たな脅威となっている。暴力団対策法という「成功」の副作用として生まれた彼らは法の隙間を巧妙に利用しより柔軟で捉えにくい組織形態を取っている。
関東連合の事実上の解体、怒羅権の分裂、アビスグループの壊滅など、従来の大型組織は曲がり角を迎えているが代わって小規模で流動的なグループが各地で活動を続けている。特に特殊詐欺や闇バイトを通じた一般市民・若年層への被害は深刻化しており警察による専門的な対応体制の構築が急務となっている。
今後の半グレ対策には単なる取り締まりだけでなく彼らが生まれる社会的背景への理解と予防的な取り組みが重要になるだろう。また絶えず変化する組織形態に対応するため従来の捜査手法にとらわれない柔軟なアプローチが求められている。
半グレという「見えにくい敵」との戦いは現代日本の治安維持における重要な課題として今後も続いていくことになる。
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