自治体・教育機関・医療法人の盲点─公共性が高い組織に潜む反社リスクとは

(R)1114_自治体・教育機関・医療法人の盲点──公共性が高い組織に潜む反社リスクとは
(R)1114_自治体・教育機関・医療法人の盲点──公共性が高い組織に潜む反社リスクとは
反社会的勢力(以下、反社)対策といえば、多くの人が民間企業の取り組みを思い浮かべるだろう。金融機関の融資審査・建設業界の下請け選定・不動産取引における売主・買主の反社チェック、これらは既に業界標準として定着している。
しかし、公共性の高い組織である自治体・教育機関・医療法人においても反社リスクは決して無縁ではなく、むしろ「公共の利益」を担う組織だからこそ反社との関係が発覚した際の社会的影響は計り知れない。にもかかわらずこれらの組織における反社チェックの取り組みは民間企業と比べて遅れているのが現状である。

◇公共工事・委託業務における浸透リスク

自治体の最大のリスクは公共工事や各種委託業務を通じた反社の浸透である。建設業界では下請け構造が複雑で元請け企業が適切でも、二次・三次下請けに反社関連企業が紛れ込むケースがある。
2019年、ある地方自治体の道路工事で三次下請けに暴力団関係企業が参入していた事例が発覚した。元請け企業は適切な審査を受けていたが下請けチェーンの途中で反社企業が入り込んでいたのである。この事件により自治体は工事を中止し契約解除に追い込まれている。

◇イベント・施設運営委託のリスク

自治体が主催するイベントや公共施設の運営委託においても注意が必要である。警備業務・清掃業務・設備保守など、日常的な業務委託の中に反社企業が参入する可能性があり、特に人材派遣業界では反社チェックが十分でない企業も存在し、知らず知らずのうちに反社関連の人材が公共施設で働いているケースもある。

◇補助金・助成金制度の悪用

各種補助金や助成金制度も反社にとって魅力的なターゲットとなる。コロナ禍で拡充された各種給付金制度では実際に反社関連団体による不正受給事件が複数発生した。自治体独自の補助金制度においても申請者の反社チェックが不十分であれば公金が反社の資金源となるリスクが発生する。

◇業務委託・物品調達での浸透

大学をはじめとする教育機関では、清掃業務・警備業務・学食運営・設備保守など、多岐にわたる業務委託が行われている。これらの委託先選定において価格競争が重視される一方で反社チェックが軽視される傾向があり、私立大学の場合、学校法人の理事や評議員の選任プロセスでも注意が必要である。寄付者や地域有力者が理事に就任するケースがあるが、その際の身元調査(反社チェック)が不十分であれば反社関連人物が学校運営に関与するリスクが発生する。

◇学生・保護者からの不当要求

教育機関特有のリスクとして学生やその保護者からの不当要求がある。成績や進路に関する過度な要求・教職員への威圧的な行為・施設利用における特別扱いの要求など、これらが反社関連であった場合は、適切な対応が求められる。

◇研究費・寄付金の管理

大学の研究費や寄付金の管理においても反社チェックは重要である。企業からの共同研究費や個人からの高額な寄付金はその資金源が適切かどうかの確認が必要である。マネーロンダリングの手段として教育機関が利用される可能性もある。

◇診療報酬制度を狙った不正

医療法人における反社リスクは診療報酬制度と密接に関連している。架空請求・水増し請求・不正な施設基準の届け出など、これらの不正行為に反社が関与するケースがある。特に、経営難に陥った医療法人は反社からの「経営支援」の誘いに乗りやすい状況にある。

◇医療従事者の人材確保

慢性的な人手不足に悩む医療業界では人材紹介会社への依存度が高い。しかし、一部の人材紹介会社には反社関連企業も存在し適切でない人材が医療現場に配置されるリスクがある。医療事故や情報漏洩などの重大な問題につながる可能性もある。

◇医療設備・薬品調達での癒着

高額な医療設備や医薬品の調達において反社企業が関与するケースもある。特に設備導入時のリベートや不適切な価格設定により医療法人の経営を圧迫しさらなる不正の温床となる悪循環が生まれる危険性がある。

◇患者・家族からの不当要求

医療現場では患者やその家族からの不当要求も問題となる。治療方針への過度な介入・医療費の不払い、職員への威圧的行為などこれらが反社関連であった場合、医療の質や安全性に深刻な影響を与える可能性がある。

◇基本方針の策定と明文化

まず必要なのは組織として反社との関係を遮断する基本方針を策定し、これを明文化することである。民間企業では当然とされているこの取り組みが公共性の高い組織では十分でないケースが多い。
基本方針には反社の定義・関係遮断の姿勢・役職員の行動規範・違反時の対応などを明記する必要がある。また、この方針を役職員全員に周知し定期的な研修を実施することも重要である。

◇反社チェック体制の構築

契約相手方や取引先に対する反社チェックの仕組みを構築する必要がある。これには反社チェックデータベースの活用・信用調査機関との連携・警察との情報共有などが含まれる。特に公共工事や委託業務においては下請け企業まで含めた反社チェック体制が求められる。

◇不当要求への対応体制

反社からの不当要求に対する対応体制も整備すべきである。対応窓口の一元化・記録の作成・保存・警察や弁護士との連携体制の構築などが必要である。また、職員が一人で対応することなく組織として毅然とした対応をとる仕組みを作ることが重要である。

◇継続的なモニタリング

反社対策は一度実施すれば終わりではない。定期的な取引先の再チェック(反社チェック)新たな反社情報の収集・分析、対策の効果検証など継続的なモニタリングが必要である。
公共性の高い組織における反社対策は、単なるリスク管理を超えた社会的責任である。自治体であれば住民の信頼、教育機関であれば学生・保護者の信頼、医療法人であれば患者・地域住民の信頼を失うことはその組織の存在意義そのものを揺るがしかねない。
民間企業の反社対策が進む中で公共性の高い組織がこの分野で後れをとることは許されない。むしろ社会の模範となるべき立場にある組織としてより高いレベルでの反社対策が求められている。
今こそこれらの組織が反社対策を「他人事」ではなく「自分事」として捉え、実効性のある取り組みを開始すべき時である。それが真に公共の利益を守ることにつながるのである。
リスク管理においては日本リスク管理センター[JRMC]の反社チェックツール(反社チェック・コンプライアンスチェック)を有効利用することで適切な管理を行う事ができます。

反社チェック・コンプライアンスチェック
反社DB(反社チェック・コンプライアンスチェック)検索画面
※わかりやすい料金プランでコストを抑えます
※警察独自情報の検索が可能
※個人名・会社名のみで検索可能(ネガティブワードの指定は不要)
※全国紙に加え地方新聞”紙面”の情報を網羅
※最短で即日導入可能